台数では少数派、高価格帯では首位の会社

2026年第2四半期の出荷台数では世界2位です。卸売価格600ドル以上の帯では首位で、売上の半分をiPhoneが作ります。CEOは2026年9月1日に15年ぶりに交代しました。

  • 年次報告は自社を「世界のスマートフォン、パソコン、タブレット、ウェアラブル市場で少数派のシェアを持つ」と書き、Counterpoint Researchの集計では卸売価格600ドル以上の帯の65%を占めます(2026年上半期)。
  • 売上の50%をiPhoneが、26%をサービスが占め、粗利率は製品36.8%に対しサービス75.4%です(2025年9月期)。
  • 2026年9月1日、ティム・クック氏が会長(Executive Chairman)に退き、ハードウェア技術担当上級副社長だったジョン・ターナス氏がCEOに就きました。

1976年の3人の契約から、従業員16万6,000人のカリフォルニア州法人へ

1976年4月1日の3人の契約に始まり、いまは従業員約16万6,000人のナスダック上場企業で、CEOは2026年9月1日に交代しました。

項目内容出典
正式社名・本社Apple Inc.(カリフォルニア州法人。本社 One Apple Park Way, Cupertino, CA 95014。2007年1月9日に Apple Computer, Inc. から改称)
創業1976年4月1日(スティーブ・ジョブズ、スティーブ・ウォズニアック、ロナルド・ウェインの3名によるパートナーシップ契約)
代表者・主な役員CEO ジョン・ターナス(2026年9月1日就任)/会長 ティム・クック/CFO ケヴァン・パレク/COO サビ・カーン(2026年9月時点)
従業員数・上場約166,000人(常勤換算、2025年9月27日時点)。ナスダック上場(AAPL)、発行済株式 14,776,353,000株(2025年10月17日時点)

ハード・OS・アプリ・サービスをほぼ一社で作り、5地域で売る

スマートフォン・パソコン・タブレット・ウェアラブルとその関連サービスを、ハードからOS、サービスまで自社で設計して販売する会社です。

事業は地域で管理され、米州、欧州、中華圏、日本、その他アジア太平洋の5つが報告セグメントです。扱う製品は共通ですが、顧客と販売パートナーの所在、地域ごとの市場の力学に合わせて別々に運営されています。

製品はiPhone(iOS)、Mac(macOS)、iPad(iPadOS)、Apple Watch・AirPods・Vision Proなどの「ウェアラブル・ホーム・アクセサリ」の4カテゴリで、売上の50%をiPhoneが占めます。2025年9月にはiPhone 17・iPhone 17 Pro・iPhone Airを投入し、日本の公式サイトにはMacBook Neo・Apple Watch Series 11・Vision Pro・AirPods Pro 3も並んでいます(2026年9月時点)。

年次報告は「ハードウェア、OS、多数のソフトウェアアプリケーション、関連サービスを含め、製品のほぼ全体のソリューションを自ら設計・開発している」と書いています。

2期連続の増収、2025年9月期は純利益1,120億ドル

売上は2期連続で増え、2025年9月期は売上4,161億ドル・純利益1,120億ドルでした(連結・米国会計基準)。売上の半分をiPhoneが、4分の1をサービスが、4割超を米州が占めます。2026年9月期は9か月で前年同期を上回っています。

年度別

会計年度売上高(百万ドル)営業利益(百万ドル)純利益(百万ドル)研究開発費(百万ドル)出典
2025年9月期(52週)416,161133,050112,01034,550
2024年9月期(52週)391,035123,21693,73631,370
2023年9月期(53週)383,285114,30196,99529,915

2024年9月期の純利益には、EUの国家補助決定に伴う一時的な法人税費用102億ドル(純額)が含まれており、2025年9月期の純利益の増加にはその反動が含まれます。現金・現金同等物・市場性有価証券は1,324億ドル(2025年9月27日時点)で、2025年9月期には4億200万株を893億ドルで自社株買いしました。

カテゴリ別(2025年9月期)

区分iPhoneMaciPadウェアラブル等サービス合計出典
売上高(百万ドル)209,58633,70828,02335,686109,158416,161
構成比50.4%8.1%6.7%8.6%26.2%100%
前年比+4%+12%+5%−4%+14%+6%

地域別(2025年9月期)

区分米州欧州中華圏日本その他アジア太平洋出典
売上高(百万ドル)178,353111,03264,37728,70333,696
構成比42.9%26.7%15.5%6.9%8.1%
前年比+7%+10%−4%+15%+10%

2026年9月期の進捗

2026年9月期は第3四半期までの9か月累計で売上3,643億5,700万ドル・純利益1,014億6,400万ドル(前年同期は3,136億9,500万ドル・845億4,400万ドル)で、第3四半期の粗利率50.1%には関税還付による約2ポイントの押し上げが含まれます。

「何千ものプロジェクトにノーと言う」を、FBI相手でも貫いた

やらないことを決めることと、ユーザーのデータを守ることの2つが、発言と意思決定の両方に表れています。

第一は、絞り込みです。1997年の開発者会議でスティーブ・ジョブズ氏は「フォーカスとはノーと言うことだ、その結果として、全体が部分の和をはるかに超える素晴らしい製品が生まれる」と語りました。2009年1月、ジョブズ氏の休職中にAppleの行方を問われたティム・クック氏は「本当に重要で意味のある少数のものに集中するために、何千ものプロジェクトにノーと言うことを信条としている」「製品の背後にある主要な技術を自ら所有しコントロールする必要がある」と答えました。

第二は、プライバシーです。2016年2月16日、クック氏は公開書簡で、捜査対象のiPhoneのセキュリティを迂回するiOSを作れというFBIの要求を拒み、それは「紛れもなくバックドアを作ること」で「何億もの錠を開けられるマスターキー」に等しいと述べました。2018年10月24日にはブリュッセルで開かれた欧州のプライバシー監督当局の会議で「私たちAppleは、プライバシーは基本的人権であると信じている」と述べ、個人データの取引を「データ産業複合体」と呼びました。

年次報告は、2025年9月期のサービス売上の増加要因として広告・App Store・クラウドサービスを挙げており、Appleは自社の広告プラットフォームと第三者へのライセンス契約を持っています。

「少数派シェア」と書く会社が、600ドル以上の帯では65%を握る

2026年第2四半期の出荷台数では2位ですが、卸売価格600ドル以上の帯では首位です。製品より粗利率の高いサービスを、製品の上に積み上げる構造を持っています。

年次報告は、競合が「積極的な価格設定と非常に低いコスト構造、そして当社製品の模倣と知的財産の侵害」で競争していると書き、自社については「世界のスマートフォン、パソコン、タブレット、ウェアラブル市場で少数派のシェアを持つ」と記しています。

台数のデータは、この自己認識を裏づけます。IDCによると、2026年第2四半期の世界スマートフォン出荷はSamsungが6,270万台(シェア22.7%)で首位、Appleは5,570万台(20.2%)で2位でした。前年比はAppleの14.9%増が上位5社で最も高く、3位のXiaomiは26.4%減です。

価格帯を絞ると、景色が変わります。Counterpoint Researchによると、2026年上半期、卸売平均価格600ドル以上のプレミアム帯は市場全体の29%と過去最高になり、その65%をAppleが占めました。Samsungは19%です。一方でAppleの同帯のシェアは、2022年上半期の74%から9ポイント下がっています。

もう一つは、製品より粗利率の高いサービスを製品の上に積み上げる構造です。2025年9月期の粗利率は、製品の36.8%に対しサービスは75.4%でした。

上位モデルが伸ばし、中国では自国ブランドに流れている

2025年9月期のiPhoneの伸びは上位のProモデルが作りました。一方、中国ではフラッグシップを強化した自国ブランドへ消費者が引き寄せられています。

比較の相手は、年次報告の言葉を借りれば「積極的な価格設定と非常に低いコスト構造」で競う競合です。Appleが挙げる競争上の要因は、価格、セキュリティを含む機能、品質と信頼性、デザインと技術革新、第三者のソフトウェア・アクセサリのエコシステム、販売網、サービスとサポート、企業の評判、知的財産の保護です。

選ばれ方は、上位モデルの伸びに表れています。2025年9月期のiPhone売上の増加はProモデルによるもので、Macはノートとデスクトップの双方が伸びました。

選ばれなくなっている側の動きも出ています。Counterpoint Researchは、Appleのプレミアム帯シェアが下がった理由として、中国でHuawei・Xiaomi・OPPO・vivoがフラッグシップを強化し、中国の消費者が自国のプレミアムブランドへ引き寄せられていることを挙げています。

直販4割・間接6割、通信キャリアと再販業者が半分以上を運ぶ

2025年9月期の売上の40%が直営店・オンラインストア・直販営業、60%が通信キャリアや再販業者などの間接チャネル経由です。

直販は直営店とオンラインストア、法人向けの直販営業で、間接チャネルは第三者の通信キャリアと再販業者です。サービスは各サービスプラットフォームを通じて同じ市場に販売されます。

売れる時期には型があります。年末商戦を含む第1四半期(10〜12月)が例年最も売上が大きく、新製品の投入時には間接チャネルが新しい在庫で満たされ、旧製品の在庫は次の製品の投入が近づくと減っていきます。

日本では、公式サイト上の下取りプログラム「Apple Trade In」を Likewize Japan などの委託先が運営しています。

「ジャンクは出荷しない」と言う技術者と、政策当局に向き合う会長

2026年9月1日から、2001年入社の機械工学出身者ジョン・ターナス氏がCEO、15年CEOを務めたティム・クック氏が会長として政策当局との対話を担います。

ターナス氏は2001年に製品設計チームに入り、2013年にハードウェアエンジニアリング担当副社長、2021年に上級副社長となりました。ペンシルベニア大学で機械工学を学び、iPad・AirPods・iPhone・Mac・Apple Watchの複数世代の設計を監督してきたと公式プロフィールにあります。就任発表では「スティーブ・ジョブズの下で働き、ティム・クックをメンターに持てたのは幸運だった」と述べています。

ターナス氏はMacBook Neoについて「私たちは決してジャンクを出荷したくない、Appleらしい体験、Appleらしい品質を備えた素晴らしい製品を出荷したい」と語っています。2024年のペンシルベニア大学工学部の卒業式では「自分が部屋の誰とも同じくらい賢いと常に想定せよ、ただし、彼らと同じくらい多くを知っていると決して想定するな」と述べました。

クック氏は1998年に入社し、COOとして世界の販売と業務を統括したのち、2011年8月24日にジョブズ氏の辞任を受けてCEOに就きました。後任について「ジョン・ターナスはエンジニアの頭脳、イノベーターの魂、そして誠実さと名誉をもって導く心を持っている」と述べ、「ジョンほど聡明で素晴らしく有能な人物に舵を渡せることに、大きな安心を感じている」と語っています。会長としては、世界の政策立案者との対話を含む会社の特定の領域を支援します。

「他人のコンピュータに金を払いたくなかった」から、1976年4月1日の契約書へ

自分のコンピュータが欲しかったウォズニアック氏の設計を、ジョブズ氏が「基板にして売ろう」と持ちかけ、1976年4月1日に3人で契約を結んだのが出発点です。

ウォズニアック氏は1984年のBYTE誌のインタビューで、Apple I を作った動機を「他人のコンピュータを使うために金を払いたくなかった、だから自分で設計することにした」と語っています。ホームブリュー・コンピュータ・クラブでジョブズ氏とともに回路図を配っていたところ、ジョブズ氏が「みんな君の作ったものに興味がある、プリント基板を作って、どの部品を差せばいいか分かるようにシルク印刷して、クラブで売ろう」と提案しました。資金は、ジョブズ氏がバンを、ウォズニアック氏がHPの電卓を売って作りました。

1976年4月1日、ジョブズ氏、ウォズニアック氏、ロナルド・ウェイン氏の3名が Apple Computer Company のパートナーシップ契約に署名しました。ウェイン氏は11日後の4月12日に離脱し、800ドルを受け取り、のちに会社からさらに1,500ドルを受け取っています。地元のコンピュータ店からは、完成品のコンピュータを1台500ドルで約100台という注文がすぐに入りました。

クック氏は2009年に「私たちは素晴らしい製品を作るためにこの地上にいる」と語っています。ターナス氏は2026年の就任発表で「半世紀にわたってこの特別な場所を定義してきた価値観とビジョンをもって導くことを約束する」と述べました。

ジョブズが持ち込み、「もっと技術的な名前」は出てこなかった

「Apple」はジョブズ氏が提案した名前で、ウォズニアック氏と二人で技術的に聞こえる名前を探しても、それを超えるものは出てきませんでした。

ウォズニアック氏は1984年にこう語っています。「スティーブ・ジョブズの頭から出てきたものだ、彼はオレゴンの果樹園で時々働いていた、果樹園にりんごがあったからか、あるいは彼の果実食主義的な性質のせいかもしれないと思った」。自伝『iWoz』では、空港からハイウェイ85を走ってジョブズ氏を送る車中で「Apple Computer」という名前が提案され、二人でより技術的な名前を考えたが良いものが浮かばなかったと記しています。

ジョブズ氏自身は、ウォルター・アイザックソンの伝記で、果実食の食事療法の最中に思いついた名前で「楽しく、活気があり、威圧的でない」と感じたと語り、1980年のプレゼンテーションでは、以前働いていたAtariより電話帳で先に出ることも理由の一部だと述べています。

社名は2007年1月9日、カリフォルニア州会社法に基づく手続きで「Apple Computer, Inc.」から「Apple Inc.」に変わりました。

ハードの売り切りと、5区分のサービス課金

ハードウェアの売り切りに、広告・AppleCare・クラウド・デジタルコンテンツ・決済の5区分のサービス収入が重なり、サービスは製品より高い粗利率を持ちます。

製品はiPhone・Mac・iPad・ウェアラブル類の売り切りで、直販と間接チャネルの双方で販売されます。年次報告は、製品の販売価格に含まれるサービスの繰延分をサービス売上として償却していると注記しています。

課金の形は区分ごとに違います。AppleCare は有償のサポート・修理契約、Apple Arcade や Apple Fitness+ は定額制のサービス、App Store はアプリとデジタルコンテンツを配信する場です。Apple Card は提携クレジットカード、Apple Pay はキャッシュレス決済で、広告は自社の広告プラットフォームと第三者へのライセンス契約から生じます。

個人から政府まで、5つの地域に分けて向き合う

顧客は個人消費者・中小企業・教育機関・大企業・政府機関の5市場で、売上の4割超を米州が占めます。

年次報告が挙げる顧客市場は、消費者、中小企業、教育、企業、政府の5つです。製品は自社の直営店・オンラインストア・直販営業のほか、第三者の販売網を通じて、これらの市場に届けられます。

地域の区切りは、市場の実態に合わせて引かれています。欧州セグメントには欧州各国に加えてインド・中東・アフリカが、中華圏には中国本土・香港・台湾が、その他アジア太平洋にはオーストラリア・ニュージーランドと他区分に入らないアジア諸国が含まれます。